・国内総生産と国民総生産はどう違うんですか?
・国内総生産は、株価にどう影響しますか?
今回も「経済のニュースに必ず登場する言葉シリーズ(?)として、国内総生産と国民総生産について、そして、こういう経済指標と呼ばれるような数値が「株価にどういう影響を与えるか?」ということについてまとめてみたいと思います。
実際問題として、国内総生産や国民総生産という言葉を知らなくても、今すぐに困るということは無いでしょう。
しかし、経済についてちゃんと知りたいという人や、株への投資を考えている人は、その意味や影響などについて理解しておいたほうがいいです。
というわけで、早速解説に入ります。
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目次
国内総生産(GDP)とは?
国内総生産は、言葉として長すぎるので、「GDP」と略して言われることが多いです。
ちなみにGDPとは「Gross Domestic Product」の頭文字を取ったものです。
【Gross Domestic Product】
Gross=全体の
Domestic=国内の
Product=生産
全部つなげると、「全体の国内の生産」=国内総生産ということですね。
意味としては漢字のほうがわかりやすい気がしないでもないですが、よく使われるのは圧倒的に「GDP」の方です。
国内総生産を一言で説明するとしたら、「その国の中で、どれくらいの価値が生み出されたのか?」という金額の合計です。
当たり前ですが、ここでいう「価値」というのは経済的な意味なので、計算されるのはお金に換算できるものだけです。
例えばAさんが野菜やお肉、お米などの材料を300円で買ってきて、カレーを作って700円で売ったしましょう。
このとき、Aさんは700-300で400円分のモノを作りだした(生産した)と考えられます。
また、Bさんがパンを100円で買ってきて、お客さんに150円で売ったら、Bさんは150-100で50円分のサービスを作り出した(生産した)と考えます。
これを国の中で全部合計すれば、どれくらいのモノやサービスが作られたかがわかるということです。
とは言っても、流石に国内で産み出された価値の全部を計算できているわけじゃありません。
例えば小学生がお母さんに頼まれて、スーパーに買物に行ったときにもらった「お駄賃」なんかは計算に入れようがないですからね。
でも、サラリーマンの給料や会社の売上などは、全て税金の計算のために国に報告する必要があるので、大きなお金の流れに関してはほとんど計算に入れることができます。
国内総生産と景気の関係
景気というのは、簡単にいえば「金回り」のこと、言い換えれば、世の中をグルグル回るお金の速度のことです。
その国の人たちが使うお金の量が全体的に少なければ、お金の流れはゆっくりになりますし、逆に多ければお金の流れも加速します。
そして、国内総生産が大きいということは、国の中でモノやサービスがたくさん作られていて、使われるお金の量も多くなっているということを意味しています。
つまり、その国の商売が繁盛して、たくさんのお金が動いている=景気がいい、ということになるわけです。
逆に、国内総生産が小さいということは、国の中で動いているお金の量が少ない=景気が悪いということを表しています。
国内総生産の計算方法
国内総生産の「国内」というのは、場所としての「国」を表しています。
だから、日本の国内総生産なら、たとえその価値を生み出した人がアメリカ人だろうとブラジル人だろうと、全部計算に入れて考えます。
逆に、価値を生み出しているのが日本人だったとしても、働いている場所が日本以外の場所だったら、日本の国内総生産には含まれないわけです。
例えば、アメリカのメジャーリーグで活躍する日本の野球選手は、どんなにたくさんのお金を稼いでも、日本のGDPを計算する場合には除外されます。
ただし、日本の野球チームに助っ人に来ている外人選手の給料は計算に入れられる、という感じです。
ざっくりまとめると、日本の国内総生産というのは「日本国内で働いている人が産み出した価値の合計」だと言えるでしょう。
国民総生産(GNP)とは?
国内総生産とよく似た用語に国民総生産(GNP)というのがあります。
真ん中のアルファベットがDから「N」になっていて、そのNは「National」、これは日本語にすると「国民の」という意味です。
全て書くと「Gross National Product」ですね。
【Gross National Product】
Gross=全体の
National=国民の
Product=生産
「全体の国民の生産」=国民総生産ということです。
日本語にしてもGDPと似たような言葉でこんがらがりそうですが、「国民」というところがポイントです。
国民総生産(GNP)の計算方法
国民総生産では「どこの国の人」か、つまり国籍を見て数字を計算するんです。
このページの前半で解説した国内総生産では、日本人だろうとブラジル人だろうとアメリカ人だろうと、「どこで働いたか」ということだけが基準になっていました。
日本の国内総生産なら、とにかく日本の中で作られたものの価値を全て合計して計算していたわけです。
それに対して、国民総生産の場合は、場所のほうが無視されます。
どこでモノやサービスを作ったか?ということは考えない代わりに、「どこの国籍の人が」価値を産み出したのか?ということを考えて計算するんです。
だから、日本の国民総生産を計算する場合、アメリカのメジャーリーグで活躍している日本人の給料は計算に入ります。
その代わり、日本のプロ野球チームで活躍している外国人選手の給料は対象外ということです。
ざっくりまとめると、日本の国民総生産というのは「日本国民全体で産み出した価値の合計」だと言えるでしょう。
国民総生産はオワコン?
国民総生産(GNP)は、今から30年以上前には、景気の良し悪しを表すための数字としてよく使われていたそうです。
というか、昔は海外で働く人も、海外で商売する会社も少なかったので、国内総生産だろうが国民総生産だろうが、あまり違いは無かったわけです。
しかし今では、海外で働く人や、海外に拠点を置く会社も増えたので、一般的にはGDPが使われることのほうが圧倒的に多くなっています。
日本の国内総生産は低迷している
実は、ここ数十年の間、日本の国内総生産はかなり低迷していて、他の国々にどんどん引き離されてしまっているという悲しい現実があります。
その理由については、色々な事が言われています。
例えば、
「企業やお金を持っている富裕層の人たちが貯蓄ばかりしていてお金を使わないから」
「昔ながらの働き方にこだわりすぎて働き方を改善しないから」
のようなものです。
ただ、最大の問題は、やっぱり少子高齢化なのではないかと思います。
特に働き盛りの人口が減っていくという状態では、一人あたりの生産性を大きく上げるような改革をしない限り、国内総生産を上向かせるのは難しい気がします。
国内総生産と株価の関係は?
国内総生産は景気と深い関係がある数値なので、国内総生産が上がれば、株価も一緒に上がりそうな気がするでしょう。
しかし、意外にも国内総生産と株価の動きを並べてみると、お互いにあまり関係なく上下を繰り返しているように見えます。
経済の専門家から見ても、はっきりとした相関関係(お互いに影響しあっているという関係)は無いようです。
これは、株価に影響を与えている要因が、国内総生産以外にも色々あるためだと考えられます。
例えば、日本の景気が良かったとしても、外国の景気が悪くなれば、日本の会社の業績は影響を受けて、それが株価にも影響するでしょう。
また、日本国内での金利が高くなれば、企業はお金を借りて投資をするのが難しくなるので、これも株価を下げる原因になると言われています。
経済のしくみというのは、そんな風にとても複雑なので、2つのものが単純に連動するということはなかなか起きないわけです。
しかし、長い目で見れば、今の時点で国内総生産が低迷していて、今後もしばらく少子高齢化の問題が解決しそうな日本の状況は、株価にマイナスの影響を与えるでしょう。
多くの投資家が、長期の投資先として日本よりもアメリカなどを選んでいる事からも、日本株の長期的な見通しは「あまり明るくない」と言えそうです。
今回のまとめ
最後に、今回のまとめです。
ポイント
- 国内総生産(GDP)=「日本国民全体で産み出した価値の合計」
- 国民総生産(GNP)=「日本国民全体で産み出した価値の合計」
- 国内総生産が株価の間に直接の関係はみられない
- 長期的には、国内総生産の低迷が株価に悪影響を与える可能性がある