・インフレやデフレは悪いことなんですか?
インフレやデフレと言う言葉も、景気や経済の話をする時に必ずと言っていいほど出てくるものです。
インフレは「インフレーション」(膨張する、膨らむ)という言葉を略したもので、デフレは「デフレーション」(収縮する、空気が抜ける)の略ですが、日本語では圧倒的に「インフレ」「デフレ」という呼び方の方が一般的でしょう。
今回は、この2つの現象がどんなもので、「経済にどういう影響を与えるのか?」という事について書いて行きたいと思います。
できるだけ身近な例を使って説明しますので、経済について学ぶ上での参考にしてみてください。
この記事についてご質問・ご意見がある場合は、記事の下部にあるコメント欄からご連絡ください。原則として24時間以内に回答を掲載させていただきます。
目次
インフレ=物の値段が上がっていくこと
インフレというのは、簡単に言えば物やサービスの値段が上がっていくことを意味しています。
例えば100円で買えたジュースが120円になったり、10円3分間話せた公衆電話が10円で1分になったり、40円切手で送れたハガキが50円切手じゃないと返ってきちゃうようになるのもインフレです。
実は日本でも、ほんの少しずつはインフレが進んでいて、調査によると2012年から2018年までの間に、物価は約6.6%くらい上がっているんだそうです。
100円の物が○年間で106円になったくらいですから、言われなければ気づかないくらいの速度ですけどね。
しかし。世界の国々を見てみると、過去にはものすごく激しいインフレが起こった国もあります。
たとえばロシアでは昔、1年間に物価が70倍くらいになってしまいました。
つまり、100円のパンが一年後に7000円になってしまったということですね。
アフリカのジンバブエという国では、なんと1年間に200万倍以上という世界最悪のインフレが起こった事で話題になりました。
これがどれくらい凄いかと言うと、100円のパンが一年後には2億円になるというくらいの話です。
宝くじで3億円当選したとしても、1年後にはジュース一本分くらいの買い物しかできないという、信じられない速度で物の値段が上がったことになります。
インフレの原因
さて、このインフレですが、原因は色々です。
まず、経済が成長していると、世の中を回るお金の料が自然に増えて、少しずつインフレになります。
給料が増えて、人々がたくさん買い物をしようとすれば、「神の見えざる手」によって物価がじわじわ上がるからです。
(詳しくは「「神の見えざる手」とは?価格を決める需要と供給の話【超入門4】」に書いています)
こういうマイルドなインフレなら、あんまり問題になりません。
例えば、昔がまだ子どもだった頃、自動販売機で売られているジュースというのは、ほぼ全て100円でした。
今でも100円でジュースが買える自動販売機が無いわけじゃないですが、大体の缶ジュースは120円くらいのことが多いですよね。
この程度のインフレなら、深刻な影響を受けるという人はまずいないでしょう。
逆に、人々が大いに困るインフレというのもあります。
例えば、戦争や事故などによってガソリンの原料(原油)が高くなる場合などです。
兵器などに大量のガソリンが使われたり、原油を掘るための施設が壊されれてしまったりすると、ガソリンの値段が一気に高くなりします。
そうするとガソリンだけでなく、ガソリンを使って輸送するあらゆるものの値段が高くなってしまったりするわけです。
既に書いたとおり、景気が良い状態でインフレが起こるのなら、入ってくるお金も増えるので、少しくらい物価が上がっても大丈夫です。
しかし。景気が悪くて多くの人がお金に困っている時に、原油価格が上がることでインフレが起こると、色々な物が売れなくなって、さらに景気が悪くなってしまいます。
ところで、さっき書いたロシアやジンバブエのような、とんでもない速度のインフレは「ハイパーインフレ」と呼ばれています。
ハイパーインフレが起こるのは、例えば政府が破産しそうな時など、その国自体が大きな問題を抱えている場合です。
例えばですが、もし日本の政府が破産寸前で、日本の通貨である「円」は、「もしかしたら紙クズになるかもしれない」という状況を想像してみて下さい。
商売をしている人にしてみたら、
「支払いは米ドルにしてよ。どうしても円で払いたいなら、10倍くらいもらわないと割に合わないよ。」
なんて思うのも当然でしょう。
お金は使う人が価値を認めているからこそ意味があるのであって、信用を失ってしまったら、その価値はいくらでも低くなります。
だから不信感が高まると、100倍や1000倍というようなハイパーインフレが起こることもあり、それによって社会は大混乱してしまうわけです。
デフレ=モノの値段が下がっていくこと
ここからは、インフレの真逆にあたるデフレの意味と、デフレによって社会がどんな影響を受けるのかということについて説明しましょう。
デフレというのは、簡単に言えば物やサービスの値段が下がっていくことです。
デフレになると、例えば3000円くらいで売られていたシャツが980円くらいで買えるようになったり、250円で売られていたハンバーガーが100円で買えるというようなことが起こってきます。
日本も不動産バブル崩壊の後は、長い間デフレだったので、色々な業界で「価格破壊」という言葉をよく聞きました。
企業やお店が「安さ」を追求する時代が続いたので、「だんだんと物が安く買えるようになっているなあ。」と感じた人も多いんじゃないかと思います。
200円台の牛丼が登場したり、1万円以下のスーツがあちこちで発売されていたりしたのも、まさにデフレの効果だと言えるでしょう。
バブル経済崩壊後のデフレでは、
「じわじわ物が安くなってる」
という感じでしたが、もっと短期間の間に大きく物価が値下がりした事例もあります。
例えば1920年代の終わりには、アメリカの株式市場で大暴落が起こり、それによって日本にも「昭和恐慌」と呼ばれる急激な不景気とデフレの波がやってきました。
その時には、たった数年の間に、多くの物の値段が20%以上値下がりしたようです。
参考:昭和恐慌(Wikipediaより)
ただし、デフレの場合はハイパーインフレのように、物の価値が100分の1とか1000分の1になったりはしません。
ハイパーインフレの場合は「お金の価値が極端に低くなる」わけですが、仮にデフレになっても、食品や洋服のような「物」はそれ自体が生活に役立つので、価値の低下には限界があるということです。
何でも安く買えるからラッキー?
「デフレになると、色々な物が安くなってラッキー!」
と考える人もいるかもしれませんが、喜んでばかりはいられません。
デフレの時は物の値段だけじゃなくて、給料も安くなるからです。
しかも、物を安くしないと売れないから、会社もビンボーになって給料が下がったり、クビになる人が増えたりもします。
デフレの原因
デフレの主な原因は、物やサービスが売れなくなることだと言われています。
例えば、不景気になることで、世の中を回るお金の勢いが無くなると、
人が物を買わなくなる
↓
物を安くしないと売れない
となってデフレの原因になるということです。
不景気の原因には色々なものがありますが、例えば「外国で物を作った方が生産コストが安いから」という理由で、会社が外国にばかり仕事を回し続けると、これが不景気の原因になったりします。
国内で仕事をもらえない人が増える
↓
ビンボーな人が増える
↓
物が売れない
ということが起こるわけです。
そして、この状態が続くと「デフレスパイラル」という恐ろしいことが起こります
安くしないと物が売れないから、会社にもお金が入らない
↓
会社にお金が入らないと、給料が安くなったり会社がつぶれたりする
↓
みんなお金が無いから、さらに物が売れなくなる
これがグルグルと、延々に続いてしまうわけです。
ちなみにスパイラルというのは「らせん」という意味です。
ホラー映画にもこんなタイトルの作品がありましたが、デフレの「らせん」もけっこう怖ろしい現象なんです。
理想的なのは「ゆるやかなインフレ」
ここまでの内容から、何となく予想ができるかもしれませんが、世の中にとって一番都合がいいのは、「景気が良くなることで、少しずつインフレしていく」という状態です。
物価が高くなったとしても、収入が十分に増えていれば大きな負担にはならないし、色々な物やサービスを買える状態になることで、人々の「幸福感」も高くなるからです。
また、景気がイマイチだったとしても、物価が適度に上がると、それによって景気が良くなるという考え方もあります。
少しずつ物の値段が上がっていくという状況では、お金を溜め込んでいると損をする(物価が上がる分だけ、お金の価値が目減りする)からです。
それによって、人や会社はお金を使うようになり、それがお金の回る速度を上げて、世の中全体の景気が良くなるという理屈です。
なので、政府は色々な手段で、この「ゆるやかなインフレ」を実現しようとしています。
今回のまとめ
最後に、今回のまとめです。
ポイント
- インフレ(インフレーション)は物価が上がること
- デフレ(デフレーション)は物価が下がること
- インフレは好景気の他、通過不安などで起こることもある
- デフレは需要の低下や、不景気によって起こりやすい
- 最も理想的なのは、景気上昇による「ゆるやかなインフレ」