・なぜ好景気や不景気が起こるんですか?
ニュースなどを見ていると、好景気(好況)・不景気(不況)という言葉がよく出てきます。
もっとも「今は好景気です」という表現を聞くことはほとんどありませんが・・・(苦笑)。
景気がいい時は、お給料が上がりやすかったり、物が売れやすかったりというイメージがありますよね。
逆に、景気が悪い時は、失業者が増えたり会社が倒産したりと嫌なことばっかり。
「景気よくパーッと飲みに行くか!」
なんていう言葉もあるくらいで、「景気は良いほうがいい」とみんな思っているわけですが、そもそも景気って一体何のことなんでしょうか?
今回は、僕たちの日々の生活に直接的な影響のある、好景気・不景気というものに関する説明をしていきたいと思います。
景気が良くなったり悪くなったりすると、どんなことが起こるのか?
そして、何が原因でそういう状態になるのか?ということを、具体例と一緒にできるだけ紹介していくので、気軽に読んでみてください。
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目次
景気=お金が世の中を回る勢い
ここで、ちょっとおさらいをしておきましょう。
「経済とは何か?「使える経済学」を学ぶために【超入門2】」のページで、お金の流れについてざっと解説するために、家計と会社、そして政府の図を紹介しました。
今回の話を分かりやすくするために、簡略化してもう一度載せておきましょう。
実際にはこれに「海外」という要素も関わってきますが、とりあえず今は話を簡単にするために、「色々な取引によってお金が世の中を回っている」ということだけをイメージしてみてください。
「金は天下の回りもの」なんていうことわざがありますが、お金は人から人へ、人から会社へ、会社から政府へと、色々なパターンでグルグルと回転しているわけです。
実際にはキレイに丸く回転しているというよりは、色々なルートで複雑に流れているわけですが、好景気とか不景気のしくみを理解する上では、その辺はあんまり気にしなくても大丈夫です。
そして、好景気というのは、単純に言うと、このお金流れが速くて、グルグルに勢いがあるということです。
回る速度が速いということは、同じ時間内に入ってくるお金が増えるということでもあります。
つまり、時給とか月給とか、年収が増えるということです。
会社からの支払われる給料が多くなり、みんながたくさん買い物をします。
さらに、生活に必要なものだけでなく、外食や旅行をして楽しんだり、ブランド物を買ったりもします。
そうすると政府にもたくさん税金が入るので、みんなウハウハです。
その他には、例えば以下のようなことが起こりやすくなります。
- 新しい建物が次々に建ったり、新しいお店ができることが多くなる
- 求人が増えて、就職・転職しやすくなり、失業率が下がる
- 物やサービスがよく売れて「売り切れ」や「キャンセル待ち」が増える
逆に、不景気というのはお金の流れに勢いがないことです。
勢いがないということは、同じ時間内に入ってくるお金が少ないということを意味しています。
入ってくるお金が少ないと、みんな買い物をしなくなります。
生活に必要なものを買うときでも、できるだけ安いものを選びます。
そうすると、会社に入るお金も少なくなるので、給料も少なくなります。
だから、当然政府に入る税金も少なくなって、みんなジリ貧です。
その他には、以下のようなことが起こりやすくなります。
- 新しい建物やお店ができることが少なくなる
- 失業率が上がって、就職や転職が難しくなり、会社の倒産も増える
- 物が売れにくくなって、安売りや「在庫処分」が増える
景気が良くなるとき、悪くなるとき
それでは、なぜ景気が良くなったり悪くなったりするんでしょうか?
これには色々な原因がありますが、それぞれ代表的な例を紹介しておきましょう。
景気が良くなった話の例「いざなぎ景気」
昭和の時代には、日本が経済的に大きく成長しました。
その中でも特に世の中に大きな影響を与えたのが、昭和40年頃から始まった「いざなぎ景気」と呼ばれている好景気です。
このきっかけになったのは、東京オリンピックだと言われています。
オリンピックのような大きなイベントがあると、お金の流れは大きく加速します。
たくさんの人がスムーズに移動できるように、道路や線路などの設備を作ったり、新しい建物を立てたりするために、膨大なお金が使われるからです。
当然ですが、そういうところにお金が一気に流れ込むと、働いている人にも(給料として)お金がまわることになります。
そして、そのお金が別の事に使われることによって、オリンピックや建築とは直接関係のないところにまでお金がまわり、社会全体としてお金の流れが早くなっていきます。
こういう風に、景気を良くする効果があるから、多くの国が「オリンピックはうちの国で!」「いや、私の国のほうがいい!」と競争をするわけです。
また、ちょっと嫌な例ですが、戦争や大きな災害などが起こると、それによって一時的に景気が良くなることもあります。
戦争をするとなれば、たくさんの武器や道具が使われることになりますし、大きな災害などで町や建物が壊れてしまえば、それを直したり作り直したりすることにたくさんのお金が使われるからです。
景気が悪くなった話の例「リーマンショック」
21世紀になってから、世界中の経済に大きなダメージを与えた出来事の一つに「リーマン・ショック」と呼ばれるものがあります。
ちなみに「リーマン・ショック」の「リーマン」というのは、アメリカの「リーマン・ブラザーズ」という会社(投資銀行)から来ています。
リーマン・ブラザーズは、ものすごく大きなお金を扱う会社だったんですが、そんな大企業が2008年に倒産したことで、経済の世界が大パニックになってしまったんです。
※リーマン・ブラザーズがなぜ倒産してしまったかについては、話がとても長くなるので、また別の機会に説明します。
大きな会社が倒産すると、その会社に投資していた人やお金を貸していた人や会社なども、大きなお金を失うことになります。
そうすると、色々なところで会社がつぶれたり、破産する人が出てきて、世の中全体のお金の流れに大きなブレーキがかかるわけです。
リーマン・ショックのきっかけはアメリカで起こったわけですが、お金の流れの図のところで少しだけ説明したように、今はお金の流れが海外とも強くつながっています。
だから、アメリカで悪いことが起こると、日本もそれに巻き込まれて景気が悪くなってしまったりするということです。
景気が良いのに貧しい日本人?
実は、この記事を書いている2019年の時点で、日本の景気はかなり良いと言われています。
日本の会社は十分に利益をあげているし、仕事がないという人の割合(失業率)も低い状態が続いているようです。
そうすると、本当なら好景気の時の特徴である「みんなウハウハ」状態になりそうに思えるんですが・・・
残念ながら、社会で働いている一般の人たちへの調査(景気ウォッチャー調査)によると、今の日本が「景気が良い状態」だと感じている人は、あまりいないようです。
多くの人の感想は「世の中を流れているお金は十分なのかもしれないけれど、自分のところには回ってきてないよ!」という感じでしょう。
この原因として、特に大きいと考えられているのが、働いている人の給料が上がっていないということです。
例えば、TBSのテレビ番組「報道1930」では、1997年から2017年までの間に、1時間あたりの給料(時給)がどれくらい変化したかという事について、次のようなグラフを紹介していました。
他の国が上がってるのに対して、日本の場合は下がっていることが分かります。
さらに、次のグラフは、「労働分配率」と言って、会社で働いている人たちが、「どれくらいの分け前をもらっているか?」ということを表したものです。
グラフに載っているのは一部の先進国だけですが、日本は特に大きく下がっていることが分かります。
簡単に言うと、日本の会社は全体的に「会社が儲かったとしても、給料は増やさない」という体質になってきているということです。
日本は長い間、景気の悪い状態が続いていたので、会社も自分の身を守るために「ケチケチ体質」になってしまったということなのかも知れません。
また、日本のサラリーマンは「給料が安い」というだけで会社を辞める事が非常に少ないので、そこに気付いた会社に利用されているという可能性もあると思います(笑)。
と、こんな風に、働いている人たちが受け取るお金は少なくなっているわけですが、残念ながらもう一つ悪いニュースがあります。
それは、物価が上がっていることです。
「消費者物価指数」という物価を表す数字を見ると、2012年から2018年の6年間だけでも、物価が6.6%上がっているのが分かります。
収入は減っているのに、それで買う物の値段は上がっているわけですから、「景気が良くなった」と思えないのは当たり前ですよね。
こんな風に、経済の仕組みはけっこう複雑なので、数字の上では好景気でも、一部の人は不景気みたいな状態になっている、ということもあります。
景気が良い時や悪い時に「起こりやすい」事というのは、あくまでも「そうなる場合が多い」というだけであって、必ず全てのケースに当てはまるわけではないということを覚えておいて下さい。
今回のまとめ
最後に、今回のまとめです。
ポイント
- 景気とは「お金が世の中を回る勢い」のこと
- 好景気とは、お金の循環速度が早くなること
- 不景気とは、お金の循環速度が遅くなること
- 大きなお金が動くイベントは、好景気のきっかけになる
- 大企業の倒産などは、不景気のきっかけになる
- 景気の影響を全ての人が同じように受けるとは限らない