・お金の本質について知りたいです
お金について実践的な勉強をするのなら、何よりもお金が持っている基本的な性質や機能について知っておかなくてはいけません。
少し回りくどい感じがするかも知れませんが、金融商品などの複雑なしくみを十分に理解するためにも、基礎の基礎をすっ飛ばして先に進むわけにはいかないのです。
というわけで今回は、お金を持つ「証明書」としての役割と、基本的な3つの機能について解説しておきましょう。
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お金は「証明書」である
多くの人は「お金に価値がある」と考えていると思います。
確かに1万円持ってれば1万円の食べ物とでも洋服とでも交換できるわけですから、そう考えるのも当然といえば当然でしょう。
でも、本当はお金そのものに価値があるわけじゃないんです。
あ、だからといって「愛はお金よりも大事!」とかそんな話じゃないですよ?(笑)
正確な意味で考えると、お金は色々なものと交換できる「引き換え券」みたいなもので、「下手をすれば価値が無くなる可能性もある」っていうことが言いたいんです。
分かりやすくするために、お金と本当に価値がある他のものとの差を考えてみましょう。
たとえば君が、1万円分のお米と1万円札の両方を持っていたとします。
で、ある日、いきなり日本銀行が「今まで発行したお金は無効になります。」と言い出したらどうでしょうか?
まあ、実際にはそんな事はまずあり得ないと思いますが、あくまでも仮定の話ということでいいので想像してみてください。
お金を発行し、その価値を認めているのは、中央銀行である日本銀行です。
言ってみれば1万円札は「チケット」のようなもので、発行元が「もう使えません」と言ったら、ただキレイな絵が印刷された紙でしかないわけです。
お金として認められなければ、お店に行って品物と交換することもできないし、銀行に「預金」として預けることもできません。
こうなればもう、無人島にお金を持っていくのと同じで、持っていても使いみちが無いということです。
食料になるわけでも衣服として使えるわけでもないので、用途として考えられるのは、せいぜい折り紙にしたり、火を起こす時の燃料くらいのものでしょう。
でも、お米の方は違います。
例えば、国や農林水産省のような機関が「今後、お米の価値を認めません」と言ったところで、お米が食べられなくなったりはしないので、根本的な価値は代わりません。
誰がなんと言おうと、生きていく上で役に立つわけですから、他人と物々交換をする時にも使えます。
これこそが本当の「モノの価値」というものでしょう。
これはかなり極端な話ですが、実際に「お金の価値が変わる」ということは本当にあるんです。
例えば、北朝鮮やジンバブエという国では、おかしな政治のせいで紙幣が紙くず同然の価値になるということが本当に起こりました。
※お金の価値の変化については「インフレ・デフレの意味を簡単に解説、物価やお金の価値はどうなる?【超入門6】」にも書いていますので参考にしてみてください。
「そんな事、日本ではありえないでしょ。」
と言われれば、確かにそうかも知れません。
それでも、日本円が米ドルに対して安くなったり、日本国内でも物価がすごく上がったりすれば、今までと同じ値段では同じものが買えなくなってしまう可能性はあります。
これはつまり、お金の価値が減っているということです。
だから大金持ちは、自分の財産を全部「現金」や「貯金」」として持っているということはまずありません。
大体の場合、外国のお金とか金(GOLD)、株券や不動産などに資産を分散して、お金の価値が少しくらい下がっても、大きな損をしないようにしているわけです。
お金が持つ3つの機能
次に、お金が持つ3つの代表的な機能について説明しておきましょう。
お金の機能1:価値の交換
お金はの持っている能力にはいくつかの種類がありますが、その中でも一番大事だと思うのが交換機能、つまり色々なものと交換できるということです。
この機能の重要性は、「お金の無い世界」をイメージするとすぐに分かります。
例えば、ある時僕がタマゴサンドを食べたいと思ったとしましょう。
お金の無い世界では、コンビニやスーパーでタマゴサンドを買ってくるということはできません。
欲しいものは自分で作るか、物々交換で手に入れるかしかないのです。
自分で作ると言っても、パンやタマゴなんかの材料も買えません。
パンを作る小麦粉や、卵を茹でる鍋すら「買う」ということはできないんです。
もしも僕がお米を持っていたとしたら、まずは「小麦粉を持っていてお米を欲しがっている人」を探さなきゃならないかもしれません。
下手をすれば、
「とりあえず小麦の栽培からはじめよう!」
というところがスタートラインになる可能性もあります。
小麦を育てるには種が必要だから、まずどこかで野性の小麦を見つけて、小麦粉を作ったら「小麦を欲しがってて鍋を持っている人」を見つけて交換してもらう。
で、それが手に入ったら、こんどは卵です。
卵は腐りやすいから、料理をする直前に手に入れておかないといけません。
でも近所にニワトリを飼っているひとはいないから、こっちから卵が手に入りやすい所に出向いていって・・・
「いつまでかかるんだ!」っていう話ですよね。
でも、お金があれば、こんな事は起こりません。
お金なら、あらゆる物と交換できるからです。
もしも自分がお金を持っていなくても、「お金と交換できる何か」を一つだけ用意すればそれでいい。
例えばパンを焼くための小麦を育てることが出来なくて、卵を産んでくれるニワトリを飼っていなかったとしても、お米を持っていたら、そのお米を売ってお金にすればいいでしょう。
絵を書くのが得意ならまずは絵を描いてそれを売ってお金に変えればいい。
歌が得意ならそれを人に聴かせてもいいし、力が強ければ力仕事を手伝う代わりにお金をもらってもいい。
そしてお金が手に入れば、それを直接パンや卵と交換すればいいんです。
しかも、そうやって価値交換ができれば、余計な手間から開放されて、仕事の効率が上がります。
ニワトリを飼っている人は、他のことをせずにニワトリを育てて卵を産ませることだけに集中していれば、それによってお金が手に入り、好きなものと交換できるわけです。
小麦を作っている人も、たくさん取れた小麦をお金に換えられるのなら、大きなトラクターなんかの農機具を買って効率よく小麦を育てられます。
色々なものと価値を交換できる「お金」というしくみがあることによって、みんなが効率よく仕事をすることができるし、少しの努力で欲しい物を手に入れることができるようになるわけです。
さらに、何でもお金と交換できるなら「お金にするといくらか?」ということを考えて物の価値を比べることもできます。
これが、お金が持つ交換機能のすばらしいところです。
お金の機能2:価値の保存
お金の持つ、2つ目の重要な機能が「価値が保存できる」というもの。
つまり、放っておいても価値が落ちたり腐ったりしないということです。
当たり前のようですが、これもすごく大事な機能なんですよ。
だって、もしも1万円札が「サバの切り身」だったらどうなるか想像してみてください。
それも燻製(くんせい)とかじゃなくて、生のまんまのサバの切り身に特殊なインクか何かで「日本銀行発行 一万円」って書いてある。
サバの一万円札、略して「サバ万券」です。
サバ万券は腐りやすいですから、当然お給料なんかもクール宅急便で届くのが基本です。
銀行に預けることも一応はできるけど、ATMを操作したらサバがたくさん出てくる・・・。
手や財布が臭くなりそうですが、それはまだいいんです。
一番の問題は、放っておくと腐って使えなくなってしまうということです。
例えば僕が農家だったとして、育てたジャガイモをお金に換えたいと考えた時のことを考えてみましょう。
サバ万券がどんなに色々なものと交換できたとしても、冷蔵庫で数日しか保存できないのでは、
「ジャガイモのままの方がいいや。」
ということになってしまうでしょう。
だったら「ジャガイモのままにしておいた方がいい」という話になりそうですが、ジャガイモだってしばらくすれば芽が出て、価値がなくなっていってしまいます。
そうすると結局、せっかく作ったジャガイモは無駄になります。
長年農家を続けていれば、豊作の時もあれば不作のときもあると思いますが、もしもお金がサバ万券だったら、豊作の時に余った分は腐ってしまいます。
さらに、世界の色々なところで価値が失われることになれば、せっかくみんなで一生懸命働いても無駄が多くなり、世の中が全体が豊かになりません。
だから、お金は放っておいても腐らない紙や金属のようなもので作ったり、電子データとして管理できるようにして保存機能を持たせておく必要があるんです。
遠い昔、貝殻や石がお金として使われていたことがあったそうですが、そういう素材が選ばれたのは、やっぱりお金に保存機能を持たせるために違いありません。
お金の機能3:量の増殖
最後の3つ目が増殖機能。
実は、お金は勝手に増えるという性質を持っているのです。
「ウソつくな!うちの金は知らないうちに減ってるぞ!」
と思ったりするかも知れませんが、まあ聞いてください。
貯金箱の中に100円玉を1枚入れておいたら、数日後には200円に・・・というように、魔法のような力で勝手に増えるというわけじゃありません。
お金の増殖機能というのは「きちんとしたところに置いておけば、少しずつ増えていく」ということです。
その一番解りやすい例が、銀行の利子でしょう。
銀行の利子は、「怠けてると付かない」ということはありません。
持ち主が何をしていようが、自分自身で増えていきます。
今はゼロ金利時代なので、ほとんど利子がつかなくなってしまいましたが、多くの国では銀行にお金を預けておけば、年間5%くらいの利子がつくのが当たり前です。
そうすると、1億円のお金を持っている人は何もしなくても年に500万円受け取れる計算になる(実際には税金などが引かれますが)わけですから、たかが利子といってもバカにはできません。
これまた最近は、超低金利によってこの法則が成り立たなくなりつつありますが、銀行は昔からこの増殖機能によって商売を続けてきました。
企業などにお金を貸して、その利子を収入源にしていたということです。
そして、お金持ちを目指しているのであれば、この増殖機能を使いこなせるかどうかが重要になってきます。
いわゆる「お金持ち」と言われるような人たちは、人の何倍も倍働いているからたくさんのお金を稼いでいるというワケじゃありません。
もちろん努力もしているはずですが、自分の労力だけで稼ぐ事には限界があります。
8時間働く人の10倍働いて、10倍稼ぐなんて不可能ですからね。
実際には、多くのお金持ちが、このお金の増殖機能を利用して豊かになっています。
さすがに今は「銀行預金の利子でお金を増やす」のは無理ですが、投資などをうまく使って効果的にお金を増殖させているわけです。
だから、リタイヤ(引退)して働かなくなっても、お金に困らないどころか、むしろ増えていくこともあります。
ところで、実はこの増殖機能は学校などで教えられる「学問」としての経済学では認められてません。
経済学の世界では、お金をどこかに預けたり投資したりして増やすことを「時間とお金を交換する」こと、つまりお金の「交換機能」の結果だと考えるからだそうです。
預けたり投資したりしている間は、そのお金を使えない代わりに「お金を使う機会」を他人に渡して、その代わりに一定のお金を受け取る「交換」をしているという事です。
しかし、お金に困らずに豊かに暮らしていくためには「お金には自動的に増える力がある」と考えたほうがシンプルで分かりやすいので、このサイトでは「増殖機能」として解説しています。
今回のまとめ
最後に、今回のまとめです。
ポイント
- お金そのものは価値を持たない「価値の証明書」である
- お金には主に3つの機能がある
→ 価値の交換:色々なものと交換できる
→ 価値の保存:とっておいても腐らない
→ 量の増殖:勝手に増えていく