・銀行がリストラを計画しているのはなぜですか?
お金のやり取りをする中で、「銀行を使ったことがない」という人はまずいないでしょう。
今はアルバイトでも正社員でも、給料は現金ではなく銀行振込で受け取るのが普通ですし、ネット通販で何かを買ったり、公共サービスの料金を支払う時も、銀行を使うことになる場合が多いと思います。
銀行も基本的には、商売をしてお金を稼いでいる「会社」ですが、やっている仕事の内容は普通の会社とはかなり違う部分があります。
そして、近年では銀行の事情も大きく変化していて、昔は「安定した就職先の代名詞」のような就職先だった大手の銀行が、大規模なリストラ計画を発表したことがニュースになったりもしています。
そこで今回は、銀行が持っている3つの基本的な役割と、「今後、銀行はどうなるのか?」という部分についてまとめておくことにしましょう。
銀行は経済のしくみの中でとても重要な役割を果たしているので、その銀行が抱えている問題について知っておくと、今の経済の大きな流れを理解する助けにもなると思います。
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目次
銀行の役割その1:お金を安全に預かる(預金)
多くの人にとって一番分かりやすい銀行の役割は、なんと言っても「お金を安全・確実に預かってくれる」という役割じゃないかと思います。
銀行に預金しておけば、「お金をうっかり落として無くしてしまう」というようなこともないし、まず盗まれる心配はありません。
通帳やキャッシュカードなどを盗まれるというリスクはゼロではありませんが、少なくとも現金をそのまま盗まれるよりは、取り戻せる見込みがずっと高くなるでしょう。
(不正に引き出された預金については、補償してくれる銀行もあります)
そして万が一、銀行強盗に銀行のお金が盗まれたり、銀行が倒産してしまったとしても、預けたお金が無くなってしまうことはありません。
銀行に預けたお金には「預金保険」というものがかかっていて、1000万円とそれに付いてくる利子までは、確実に保証されるようになっているからです。
(利子の付かない「当座預金)なら、金額無制限で補償されます)
もしも、銀行のように安全にお金を預かってくれるところが無かったら、ヘソクリのような形で家のどこかに大金を隠したり、金や宝石のような物に変えて、ビクビクしながら生活することになりかねません。
さらに、銀行は預かったお金をそのままの金額ではなく、利子まで付けて返してくれます。
今は金利が異常に低いので、利子もほとんどゼロに近いような状況ですが、無料でお金を管理してくれた上でオマケを付けてくれるわけですから、利用する側にとってはありがたいしくみだと思います。
銀行の役割その2:お金を払ったり、受け取ったりする(決済)
預金の次に、多くの人が生活の中でよくお世話になっているのが、お金の支払いや受け取り、つまり「決済」の役割だと思います。
これは、月給などを会社から自分の銀行口座に振りこんでもらったり、通販で洋服を買う時に、その代金を相手の銀行口座に振り込んだり、というようなものです。
電気やガス、水道代などの公共料金を支払先の銀行口座に振り込んだり、銀行の口座から引き落としてもらっているという人も多いでしょう。
最近は振り込み手続きではなく、スマホの決済機能やクレジットカード、デビットカードなどを使うという人も多いと思いますが、そういうものの裏でも銀行の決済機能が動いています。
Pay PayやLINE pay などのようなサービスも、最終的には銀行の口座を通してお金のやり取りをするしくみです。
もしも、銀行が決済の役割を担当してくれなかったら、お金の受け取りや支払いの作業は、恐ろしく手間のかかるものになってしまうでしょう。
何を買う場合もいちいち現金を用意して、直接手渡しができない相手に支払いをしようと思ったら、現金書留などを使ってお金を送らなきゃいけなくなります。
給料も手渡しなので、給料日の帰り道には、誰かに襲われてお金を奪われたりしないかと、ビクビクしながら家に帰ることになるでしょう。
現金が相手に渡らない限り支払いの確認が終わらないので、全てのビジネスのスピードが一気に落ちることになると思います。
銀行の役割その3:お金の貸し借りの手伝い(仲介)
上の2つに比べると、お世話になっているという感覚は少ないかも知れませんが、お金を貸したり借りたりするための手助け、つまり「仲介」も、銀行の大事な役割の一つです。
例えば、新しくお店を開いたり会社を作ったりする場合には、何千万とか何億円、場合によってはそれ以上のお金が必要になります。
こんな大金を最初から用意するのは難しいので、まずは銀行からお金を借りてビジネスをスタートさせる事が多いです。
いわゆる「銀行から融資を受ける」というものですね。
住宅ローンなども、銀行の融資の一つです。
こうして銀行から借りたお金は、お店や会社が商売をして得られた利益といったような収入の中から、毎月少しずつ返していきます。
ちなみに、この時に銀行が貸すお金は、預金として多くの人や会社から預かっているものがメインです。
つまり、銀行が仲介の役割をしてくれるからこそ、「100人の人から1万円ずつ集めて、1人の人に100万円として貸し出す」というような事が可能になるわけです。
誰かが使わずに持っているお金を、他の人の役に立てることができる。
銀行のこの役割のおかげで、世の中に回るお金の量は増えて、多くの人が豊かになれるということです。
もしも銀行がお金の貸し借りを仲介してくれなかったら、大金が必要な人や会社は、そこら中の人に声をかけて、お金を借りて回らなければならないかもしれません。
今後、銀行はどうなる?
ここまでに書いたように、経済の仕組みの中では重要な役割を果たしている銀行ですが、最近はかなり経営状態が厳しくなっているようです。
2018年には、大手の銀行が大規模なリストラ計画を発表したことが、大きな話題になりました。
画像引用元:読売新聞サイト
昔の銀行は、企業などにお金を貸した場合の金利を大きな収入源にしていました。
しかし、今はその金利が非常に低いので、いくら頑張ってたくさんのお金を貸しても、ほとんど儲からないわけです。
さらに、楽天やソニー、イオンというような他の業種も銀行の世界に入り込んできてライバルが増えたことも、既存の銀行にとっては大きなダメージになったと言われています。
最近はキャッシュレス化が進んでいるので、銀行の窓口や受付など、直接お金を扱う仕事もかなり減ってきています。
そうすると、必要になる人の数が少なくなるだけでなく、すでにある設備や建物を維持するための費用も「無駄なコスト」になってしまうわけです。
今後は、仮想通貨(正式名称は暗号資産)のように、銀行を全く経由しないような取り引きの方法も増えてくると言われていて、これも今の銀行の商売にとってはマイナスになりそうです。
最近は、「複数の銀行で1種類のATMを使えるようにして経費を削減する」というような努力もされているようですが、今後も「今までの銀行の業務」がどんどん小さくなっていくということは避けられないでしょう。
ただ、日本の銀行の業務が苦しいのは、もともとの「業界の体質」も関係していると言われています。
かなり長い間、日本では、銀行同士の間で競争が起こらないようなしくみが守られてきました。
どこかの銀行だけが新しいサービスを始めたり、商売のやり方を変えたりすると、「選ばれる銀行」と「選ばれない銀行」つまり「勝ち負け」ができてしまって、負けた銀行が潰れてしまうリスクが出てくるからです。
つまり、勝ち負けが決まると誰かが損をするから「みんなで同じ様にやろうね」と約束して、変わることを避けてきたわけです。
しかし、世の中がこれだけ早く変化しているわけですから、そんなやり方はもう時代遅れだと言えるでしょう。
きちんと「必要な競争」をして、消費者にとって役立つサービスを考えていかない限り、社会の中での銀行の存在は、ますます小さくなっていってしまうと思います。
今回のまとめ
最後に、今回のまとめです。
ポイント
- 銀行には大きく分けて「預金」「決済」「仲介」の3つの役割がある
- 超低金利や競争の激化などで、銀行の収益は大きく低下している