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速読効果の嘘-フォトリーディングを学んで感じたこと

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本のページ

元底辺サラリーマン、現在は独立して好きなことを仕事にする「ライフワーカー」育成のプロジェクトに取り組んでいるROCKです。
・速読って、誰でもできるようになるの?
・数分で本を読めるなんて嘘じゃないの?
・速読は勉強にも効果があるの?

こんな風に、速読の効果について知りたいという人に情報をシェアしたいと思います。

僕はまだサラリーマンだった頃に、少しでも時間を有効に使おうと「フォトリーディング」という速読法の練習をしたことがあります。

結果として得るものはあったと思いますが、やる前に持っていたイメージと実際の効果には、かなりギャップがあったことも事実です。

その後、速読の効果に関する海外での研究について調べてみたり、速読の母国であるアメリカの大富豪たちと交流がある人にも話を聞いてみたりもしたので、そのあたりの情報についてもまとめておくことにしましょう。

この記事を読んでもらえれば、速読に「お金や時間をかけてまで習う価値があるかどうか」が判断しやすくなると思います。

この記事についてご質問・ご意見がある場合は、記事の下部にあるコメント欄からご連絡ください。原則として24時間以内に回答を掲載させていただきます。

速読の方法について

速読の方法

速読にはいくつかの「流派」のようなものがあり、それぞれ考え方や練習法が少しずつ違っています。

しかし、大ざっぱに説明すると、以下のような方法で読む速度を上げようとするのが一般的です。

  • 視点を固定して紙面全体を画像のように捉える、又は視野を広げて目を動かす
  • 一定のリズムでページをめくり、そのスピードで情報を捉えられるようにする
  • パソコンなどのモニタに情報を移し、高速で表示内容を変えながら視覚的に情報を入れる

例えば、僕が練習していた「フォトリーディング」という方法では、1秒に1回ページをめくり、1秒あたり2ページ(本の見開き分)のページを、目を動かさずにイメージ(画像)として頭の中に入れていく練習をします。

また、「フォーカス・リーディング」という別の方法では、一度に認識できる文章の範囲を広げることで、最小限の視線の動きだけで内容を把握できるようなトレーニングをしていくそうです。

いずれにしても、普通では考えられないような方法でページをどんどんめくっていくので、見た目のインパクトはかなり強いです。

僕は半年くらい速読のトレーニングに取り組みましたが、電車の中でやっていると、必ず周りの数人くらいの人が、僕のことを物珍しそうに「見物」していました。

実際には、速読の練習をしていただけなんですが、「只者じゃない!」と思われていたのかも知れません。

速読の効果は科学的に否定されている

本を捨てる

残念ながら、速読によって「短時間で知識が得られる」ということは嘘(勘違い)であるということが分かっています。

科学の常識というのは時代によって変わるので、今後の研究で新しい効果が発見されるという可能性はゼロではありませんが、少なくとも現時点では「やる意味がない」と考えられているということです。

カリフォルニアの心理学者、エリザベス・ショッター氏によると、

The available scientific evidence demonstrates that there is a trade-off between speed and accuracy--as readers spend less time on the material, they necessarily will have a poorer understanding of it,
入手可能な科学的証拠は(読むことの)速度と正確さの間にはトレードオフであり、読み手が時間を節約した場合、より理解度が落ちるということを示している。

とのことです。
参照:New Science: Speed Reading Really Is Too Good to Be True(英語サイト)

ちなみに「トレードオフ」というのは「片方を優先すると、もう片方が犠牲になる」という性質ですね。

また、速読の講義ではよく「目を動かしている間は文字を認識できないので、眼球の動きは最小限にすべき」という話が出てきますが、これについても次のように否定されています。

The problem is not only that eye movement accounts for no more than ten percent of the time we spend reading, but also that preventing a reader from moving their eyes stops her from being able to go back and check a section of text that she's failed to understand.
(速読術の)問題は、目の動きが占める時間の割合が10%以下であるというだけでなく、読み手が目を動かさないようにすると、理解しそこねた部分を確認し直すことができない点である。

速く読もうとすることの弊害については、同じくサンディエゴ大学のレイナー教授の論文の中にも、以下のような表現がありました。
参照:So Much to Read, So Little Time: How Do We Read, and Can Speed Reading Help?(英文PDF)

It is unlikely that readers will be able to double or triple their reading speeds -中略- while still being able to understand the text as well as if they read at normal speed.
読むスピードを2倍・3倍にしながら、普通の速度で読んだ場合と同じ様に文章の内容を理解できるということは起こりそうにない。

さらに、フォーカス・リーディングのような「認識できる文章の範囲を広げる」という話についても、バッサリ切り捨てられています(苦笑)。

The final aspect of the perceptual span that we should point out is that readers do not access any information from the lines above or below the line currently being read.
知覚に関して我々が指摘しなければならない最後の側面は、読み手は読んでいる行の上や下の行の情報にはアクセスしないということである。
※この場合の「しない」とは「できない」ということを断定的に表現しているのだと思います。

追記:フォーカス・リーディングについて

この件について、フォーカス・リーディングの開発者である寺田さんからコメントを頂きました。

実際のフォーカス・リーディングでは「視野を広げる」のではなく、「目的や状況に応じてスピードと理解度のバランスをコントロールする」という方向で認知力を高める事を目指しているそうです。

本を素早く読んで情報収集できる人たちは、素早く読めるところはサッと目を通し、複雑な箇所や重要な部分はゆっくり読んだり、複数回読み直したりすることが多いので、そういった「効率的な」読み方を目指すと考えれば、「バランスのコントロール」というのは確かに重要な要素だと思います。

このことから考えると、フォーカス・リーディングは、多くの人がイメージしている(超能力のような)「速読」ではなく、正攻法で読書力を鍛えるメソッド(方法)ということになるのかもしれません。

速読術の全てが嘘なのか?

本と時計

では、速読というのが全く何の役にも立たない「無用の長物」なのかというと、さすがにそんな事はないと僕は思います。

例えば、速読のトレーニングの中では、全体を通し読みする前に目次や見出しなどをざっと確認する練習もあります。

そして墨の場合、速読の練習によって、読書に対しての考え方に大きな変化がありました。

それまでは「読書」というと、基本的には最初から最後までを順番に「完読する」ものだと考えていたんですが、本の構成を知ることで「部分読み」でも十分に情報を把握できる場合が多いということに気付いたんです。

さらに、部分読みや斜め読みによって内容を把握する練習をすることによって、限られた情報から筆者の意図を理解する能力も上がりました。

つまり、フルに内容を理解したいという場合は役に立たないけれど、何が書いてあるかをざっと確認するテクニックは身につくということです。

特に、自分が知っている事に関係したテーマの本をチェックする時には、かなりの時間短縮になると思います。

この点については、エリザベス・ショッター氏も、以下のように書いています。

In fact, data suggest that the most effective 'speed readers' are actually effective skimmers who already have considerable familiarity with the topic at hand and are thus able to pick out key points quickly.
実際の所、優れた「即読者」は、既に目の前の話題についてよく知っているので、優れたスキマー(大事な情報だけを抜き取る人)だということを示している。

読む速度=学習速度ではない

本の山と女性

僕の体験談の中にも書いたように、速読という技術は見た目のインパクトがとても強いので、その部分に憧れる人も多いでしょう。

僕自身、速読者が一瞬で本の内容を理解する様子をテレビで見たことがあるので、そういうイメージが速読を練習するきっかけの一つになっていたと思います。

1冊の本を5分、10分で読めれば「立ち読みだけで必要な本が読破できるんじゃないか?」とか「人の数倍の速度で勉強ができるんじゃないか?」とか、そういう希望を抱いていたわけです。

しかし、実際に速読を練習してみて、そんな事は幻想だということが分かりました。

最も重要なのは、いくら文字を速く追えるようになったとしても、内容を理解する速度まで上がるわけではないということです。

例えば、教科書などを読む場合でも、もし読んだ内容を一瞬で理解できるだけの能力があれば、読み終えるまでに大した時間はかからないでしょう。

実際には、同じ部分を何度も読み返したり、問題を解くために考えたりすることに時間が必要だからこそ、勉強には時間がかかるわけです。

もしも、読むスピードさえ上がれば学習効果が上がるんだとしたら、速読を習った人はどんどん他の人を引き離して、仕事や勉強などで大きな実績を出しているでしょう。

そうなれば、速読というもの自体がもっと世の中に広まって、成功者の必須技能のようになっているはずです。

でも、僕が直接に会ってきた起業家の中に、速読によって成功をつかんだという人はいませんでした。

ネットを検索すると、楽天の三木谷社長やビル・ゲイツ氏が即読者であるという情報が色々な所に出ていますが、これも出どころがはっきりしません。

サイトによって書いてある内容がバラバラであるところを見ると、恐らく噂に尾ヒレがついて話が大きくなってしまっているんだと思います。

念の為、アメリカの大富豪と人脈のある人にもSkypeで話を聞いてみましたが、億万長者の中に速読者が多いとか、お金持ちが速読を重視しているというような話は「聞いたこともない」そうです。

学習効果を上げるために大切なこと

勉強と本

読んだ本の内容をきちんと理解して、その情報を活用していくために大事なのは、時間をかけずに読むことではなく、むしろその逆の「時間をかけて読む」ことだと思います。

わざわざ目をゆっくり動かして本を読む必要は全くありませんが、大事だと思った部分やスムーズに理解できなかった部分については、何度も読み返してその内容を自分の中に「浸透」させていくということです。

なので、もしも速読を活用するのなら、それは多くの出版されている本の中から、自分が求めている本を探す段階に限られると思います。

そして、もう一つ大事なのは、単純に本を読む機会を増やすということです。

一つ前の項目で「読む速度が上がっても、理解する速度は上がらない」ということを書きましたが、読書量を増やすと「言葉を理解する速度」が上がるので、それによって学習の効率も上がります。

英語を読む練習をしている人の方が、何もしていない人よりもスムーズに英文を読めるのと同じ様に、普段からたくさん日本語を読んでいる人の方が、速い速度で本を読めるという単純な理屈です。

これについては、さっき引用したレイナー教授の論文の中にも以下のような説明があります。

The way to maintain high comprehension and get through text faster is to practice reading and to become a more skilled language user. 中略- This is because language skill is at the heart of reading speed.
高い理解力を保ち、文章をより速く読むためには、より経験を積んだ言語の使い手になることです。(中略)なぜなら、語学力こそが読解速度の中心となるからである。

非常に地味な結論で申し訳ありませんが、優れた「学習者」になりたければ、まずは本や教科書、参考書などを読む機会をできるだけ増やすことが、最も確実で効果的な方法だと思います。

今回のまとめ

最後に、今回のポイントをまとめます。

ポイント

  • 目の動きと視界に入る情報をコントロールするのが速読法の基本
  • 速読の効果は、既に科学的に否定されている
  • 速読は本の内容をざっと理解し、要点を知るためには役立つ
  • 読む速度が上がっても、学習速度同じ様に上がるわけではない
  • 学習効果を上げるために確実な方法は、言語能力を上げること
<こんな人にオススメ>
  • 自分が何を望んでいるか、何をしたいかが分からない
  • やるべきことがあるのに、腰が重くて行動に移せない
  • 何かを始めても、すぐに挫折してしまうことが多い
  • この記事を書いた人
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ROCK

底辺サラリーマン→webビジネスを学んで独立。
現在は現在は好きなことをする「ライフワーカー」を育てるミッションを遂行中。
ハンドルネームはドランクドラゴンの塚地さん公認(笑)。

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