・思考を言語化するためのトレーニング法が知りたいです
思っていることを言葉として表現する「言語化」の能力は、あらゆる面でとても重要になるものです。
仕事だけでなくプライベートでも、そしてもちろん恋愛でも、頭の中で考えていることをうまく表現できない人、つまり言語化する能力が未熟な人は、コミュニケーション能力に大きなハンデを背負うことになってしまいます。
人と人とのやり取りや、それに対しての評価は、全て「意思疎通」、つまり考えを伝える事がベースになっているので、言語化がうまくできないと、それがトラブルの種にもなります。
人にこんな事を言われてばかりでは、「物分りが悪い人」「使えないヤツ」のレッテルを貼られてしまいかねません。
自分が上に立つ立場になったり、お金を払って何かを依頼する立場になっても、相手にやってもらいたい事をうまく伝えられなければ、期待通りの結果にならないケースが多くなります。
感覚的には伝えたいことがあるのに、それを言葉にできないということは、自分にとっても大きなストレスになりますよね。
僕は普段「弱点を克服するよりも長所を伸ばして武器にしましょう。」と言っていますが、残念ながらこの言語化については、弱点を放置するわけにいきません。
単純に「対面で話すことが苦手」というくらいなら、文章力などによってカバーできますが、言語化そのものが苦手ということになると、活躍できる分野が極端に限られてしまうからです。
たぶん、思っていることをうまく表現できなくても高く評価される仕事なんて、一部のアスリートや、限られた分野のアーティストくらいなんじゃないかと思います。
完全な肉体労働や単純作業という手もありますが、そういう仕事は「職業に対する評価」が低いことが多いですからね。
逆に、言語化能力をトレーニングしていると、世界は一気に広がります。
仕事でも認められやすくなるし、相手に「理解されている」と思ってもらえるので、人間関係自体がスムーズになるわけです。
面接で最も重視されるのはコミュニケーション能力だし、人に伝わる言葉で表現できれば、アフィリエイトでもよく物が売れたりします。
ぶっちゃけ、言語化する力は「お金になる」能力なんです。
というわけで、ここからは言語化する能力を鍛えるための方法について解説していきましょう。
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目次
言語化トレーニングを始める前に
言語化トレーニングの最初の段階では、話し言葉としてよりも、文章で表現する練習をした方が、より確実に効果が得られると思います。
口頭でのやりとりだと、その場で(つまり短時間の間に)考えて話す必要があり、さらに結果が形に残りにくいので、とても難易度が高いです。
これに対して、文字で書くようにすれば、後で何度も読み返したり、修正することができます。
特に、今現在「思っていることをうまく表現できない」と感じている人は、絶対に「書き出す」ということをサボらないようにしてください。
ちょっと厳しいことを言うようですが、言語化というのは「思考を明確に言葉で表現すること」なので、そのトレーニングをするにもかかわらず、頭の中だけで「こんな感じでやってみよう」と考えるような人に、成長の見込みはありません。
言語化トレーニングの方法
頭の中で考えていることを、うまく言葉で表現することができないのには、いくつかの原因があります。
つまり、言語化する能力を上げるには、この原因を取り除くためのトレーニングをすればいいということです。
というわけで、言語化をジャマしている原因と、それを解決するための方法について説明していきましょう。
考えがまとまっていない
言語化が苦手な人に最も多いのは、言葉にするという以前に、そもそも頭の中で考えがまとまっていないというパターンです。
言語化というのは、考えていることを言葉に変換する作業ですから、変換前のものがはっきりしなければ、そこから先に進めないのは当然です。
日本語を英語に翻訳する時に、そもそも日本語の意味がよく分からなければ、訳せるはずがないのと同じです。
「考える」事を習慣化する
そして、これを解決するために重要なのは、何よりもまず物事をある程度「深く考える習慣」を身につけることです。
考えがまとまらない人というのは、普段から色々なことを「何となく」で判断していることが多いです。
例えばですが、
- 「なぜ、朝起きたら顔を洗うのか?」
- 「なぜ、お風呂に入るのは、夜寝る前なのか?」
ということを聞かれた時に、
- 「いつもそうしているから。」
- 「そうしないと落ち着かないから。」
というような答えしか出てこないというような場合は要注意です。
言語化がきちんとできる人なら、少なくとも10秒くらいあれば、
- 「寝ている間に、唾液や涙で顔が汚れやすいから。」
- 「頭や体を洗ってから寝ないと、寝具が汚れるから。」
というような理由を複数挙げることができるでしょう。
なので、言語化が苦手だという人は、まず日常の色々なことについて、「なぜ」それをするのかということを考えて、答える練習をしてみてください。
- 「なぜ、昼食にパンではなくごはんを選んだのか?」
- 「なぜ、会社に行くことをストレスに感じるのか?」
- 「なぜ、早起きを習慣にすることができないのか?」
普段は「当たり前」だと思っていることに対して、そうやって理由を追求するようにする練習を「1日に10回」みたいな感じで決めて、毎日それを繰り返すわけです。
この時のコツは、長々と理由を説明するのではなく、箇条書きのような形で完結にまとめることです。
- 「なぜ、昼食にパンではなくごはんを選んだのか?」
→ 弁当屋の方がパン屋よりも近かったから
→ 弁当のほうが野菜を多めに食べられるから
→ 前日のランチがパンで、違うものを食べたかったから
みたいな感じです。
これが瞬間的にできるようになると、短時間で考えをまとめられるようになり、思っていることを言語化する時の難易度が一気に下がります。
例えば、面接などの時に、
「あなたが会社に求めるものは何ですか?」
と聞かれた時に、
「求めるもの、ですか・・・えーっと・・・」
と口ごもらずに、
「はい、大きく分けると3つあります。まず1つ目は(以下略)」
というように、瞬間的に明確な答えが返せるようになるんです。
上級者になると、何も思いついていない状態でも「3つあります」とか「5つあります」とテキトーに言って、その後に「考えをまとめながら話す」という事すらできたりします。
頭の中にあるイメージに相当する言葉が見つからない
人は考えていることを言葉にする時に、頭の中のイメージに対応する言葉を選ぶことで、それを相手に伝えようとします。
でも、知っている言葉の数、いわゆる「語彙」(ごい)が十分でないと「これ、なんて言ったらいいんだろう?」ということになり、うまく言語化できません。
これを防ぐ方法は、大きく分けて2つあります。
語彙を増やす
1つ目は、とにかく使える言葉の数を増やすトレーニングをすることです。
英語を話す場合にも、1つの文章の中に「これ、英語ではなんて言うんだろう?」という言葉が何度もでてきたら、とてもスムーズな翻訳はできないでしょう。
それと同じで、意味を知っていて使いこなせる言葉が少ないと、脳内イメージを言葉にする時につまずくことになるわけです。
これを改善するには、とにかく人の話をたくさん聞いたり、文字を読む機会を増やすようにして「使える言葉」の数を増やすようにしましょう。
ただし、言葉の意味に関しては、間違った使い方をする人も多いので、新しい言葉に出会った時は、必ずweb辞書などで正確な意味を調べる必要があります。
パラフレーズを練習する
そして2つ目は、パラフレーズを使いこなす練習をすることです。
パラフレーズというのは「分かりやすく別の言葉で述べる」時に使う言葉の集まりです。
例えば、「予算」のパラフレーズは「使えるお金の額」になり、「議題」のパラフレーズは「会議で話し合うテーマ」というような形になります。
(分かりやすく表現できれば、他のパターンでもOKです。)
語彙を増やすだけだと、相手や状況によってはうまく伝わらないことがありますが、パラフレーズが上手に使えると、その状況に合わせた柔軟な言語化ができるようになります。
また、人に何かを分かりやすく説明するための訓練としても有効です。
パラフレーズを上手に使えるようになるためには、言葉を制限して何かを説明するトレーニングをしてみてください。
例えば「リンゴ」について、それを直接連想させるような言葉(果物、赤い、丸い、青森、アップル)をあらかじめ「禁止ワード」として設定して、それらを使わずに説明するわけです。
- 真ん中に芯と小さな種があって、パイを作るのに使われる食物
- 童話の中で、魔女が毒を入れて白雪姫に食べさせたもの
のような表現ができれば、ほとんどの人は理解してくれるでしょう。
1人でやる時は、自分で「お題」を作り、パラフレーズだけを人に見せたり聞かせたりして、目的の答えを言ってもらえれば「正解」になります。
3人以上のグループでできる場合は、Aさんが問題と禁止ワードを指定して、その言葉をBさんに伝え、BさんがCさんに対してパラフレーズで説明する、という形でやれば、ゲームとしても楽しめるのでおすすめです。
英語の勉強には「TABOO」がおすすめ
英語を勉強している人は、このパラフレーズを作る「TABOO」というゲームがあるので、ぜひやってみてください。英語力と言語化能力を同時に鍛えることができるので、まさに一石二鳥です。
表現しているつもりなのに、相手に伝わらない
「自分ではきちんと説明しているつもりなのに、なぜか相手にはうまく伝わらない・・・。」
という場合は、主に3つのことに注意してみて下さい。
プロトコルを合わせる
まず1つ目は、「プロトコルを合わせる」ということです。
プロトコルというのはもともと「儀礼」とか「あらかじめ手順を示すこと」のような意味ですが、コミュニケーションの中でのプロトコルというのは「話の前提を明確にすること」と考えると分かりやすいでしょう。
「言語化」というと、言葉の使い方だけに目が行きがちですが、実は言語化が苦手な人というのは、「何を言語化するのか」という範囲からして間違っていることがよくあります。
例えば、友達からLINEなどで、
「おすすめの仕事ある?」
なんていう文面が送られてきたら、君はどう思うでしょうか?
恐らく最初に思うのは、
「え?何?何の話?これだけじゃ分かんないよ。」
という事だと思います。
これは、コミュニケーションのプロトコルが合っていない状態です。
本来なら、
「君は以前、建設会社で働いてたよね?俺の弟が仕事を探してて、頭はともかく体力はある奴なんだけど、何かおすすめがあったら教えてくれないかな?」
という内容にすべきでしょう。
この文では、前半の黄色い部分が話の「プロトコル」ということになります。
これがあると無いとでは、伝わり方が全く違ってくるので、メールやブログを書くときでも、会話をするときでも、必ず「プロトコルを合わせてから」ということを意識するようにしてみてください。
反復してトレーニングすることで、だんだんと自然にプロトコルを合せられるようになるはずです。
要点をまとめる
「話が長すぎるよ。」
「メールが長すぎて読むのが面倒くさいんだけど。」
「もっと要点から言ってよ。」
「結局、何が言いたいの?」
こういう事をよく言われてしまう人の場合、最大の原因は、言語化した後の言葉に無駄が多いことです。
極端に言えば、1時間のドラマのあらすじを、2時間くらいかけて話しているようなものです(笑)。
これを改善するためには、できるだけ不要な情報を取り除いて、必要なことを完結に表現するトレーニングをしましょう。
そのために、手軽ですぐに活用できる方法が、代表的SNSの一つであるTwitterです。
Twitterでは140文字という文字制限があるので、何か特定のテーマについてこの文字数以内でツイートする練習をしてみてください。
最初は200文字とか300文字になってしまったとしても、どんどん不要な部分を削っていくようにすれば、最終的には「密度の高い」文章が書けるようになります。
メールや報告書など、文字の媒体にはそのまま応用できる方法なので、練習の成果をすぐに実感できるでしょう。
テンプレートを使う
これも言語化の「範囲」に関することで、特に文章で人に何かを伝える時には即効性がある方法です。
テンプレートというのは、要するに「雛形(ひながた)」のことで、テンプレートに沿って相手に伝えるトレーニングをすることで、「必要な範囲でムダの少ない」言語化ができるようになります。
例えば、ブログで記事を書く場合なら、
- 誰に向けて書くか
- 読んだ人にどんなメリットがあるか
- 言いたいこと(結論)
- なぜ、そう言えるのか(理由)
- 例えば(根拠・具体例)
- 全体のまとめ
という形で書けば、何も考えずに書くよりも、ずっと全体の構成がわかりやすくなるでしょう。
会話の場合は、相手の反応によって順番が変わったり、省略する部分も出てきたりするので、少し難易度が上がります。
それでも、大まかな流れを意識しておけば、話の内容が分かりやすくなるという点では同じです。
こういうテンプレートは、話の上手な人からパクっても「盗作」にならないので、積極的に上手な人の真似をしながら、自分なりの方法を作っていってみてください。
メールにはメールのテンプレート、報告書には報告書のテンプレートという形でパターンを増やしていけば、応用範囲を広げることも難しくないと思います。
今回のまとめ
最後に、今回のまとめです。
ポイント
- 言語化の能力は、あらゆる人に必要なもの
- 「書く」事をサボる人は、言語化の能力が成長しにくい
- 言語化を妨げる問題点
1.考えがまとまっていない
→理由を追求する習慣を作る
2.思考に該当する言葉が分からない
→使える言葉を増やす
→言い換えの練習をする
3.表現しても相手に伝わらない
→話の前提(プロトコル)を合わせる
→無駄な言葉を省いて要点をまとめる
→テンプレートを使う