・怒りやイライラをうまく抑えることができません
※不安や恐怖、心配への対処法に関しては「メンタルが不安定な時にできる2つのこと」のページで解説しています。
いつも冷静沈着に物事を判断できれば最高ですが、残念ながら人間である限り、感情の影響をゼロにするのは無理でしょう。
そして色々な感情の中でも、特にコントロールするのが難しいのが「怒り」だと思います。
怒りに任せて行動すると、後で取り返しのつかないことになったりするし、仮にそこまでひどい状態にならなかったとしても、怒った自分に自己嫌悪して、余計にストレスが溜まったりするわけです。
そこで今回は、感情の中でも特にやっかいな「怒り」をコントロールするための訓練方法について書いてみます。
怒りをコントロールすることは「アンガーマネジメント」と呼ばれていて、最近はビジネスの分野でも必須のスキルとして取り上げられる事が多くなりました。
アンガーマネジメントの訓練をすることは、いわゆる「怒りっぽい人」にとってだけでなく、心の中でひそかに不満を抱えているような人のストレス軽減にも役立つので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
感情は直接コントロールできない
これは「メンタルが不安定な時にできる2つのこと」にも書いたことですが、感情というのは自然に湧き上がってくるものなので、それを直接コントロールすることはできません。
目の前にナイフを突きつけられれば誰でも怖いですが、これを「怖がらないようにしよう」と思ったところで、できるのは「怖くないフリ」をすることだけで、感情そのものは消えないでしょう。
できることは、感情が沸き起こった時に取る行動や、それをどう捉えるかという思考の部分をコントロールする訓練だけです。
それを何度も繰り返していると、物事の捉え方が少しずつ変化してきて、それによって間接的に感情も変化してくるという感じです。
逆に、怒りやイライラが沸き起こってきた時に、それを無理やり押し殺そうとしていると、うまく行かなくてさらにストレスが溜まることになるでしょう。
そして、無理やりそんな事を続けていると、どこかで感情が爆発するようなことになってしまう可能性もあります。
怒りには2つの種類がある
感情をコントロールする訓練をする上では、怒りには2つの種類があると考えると分かりやすいでしょう。
1つ目は「反射的な怒り」で、これは例えば、誰かと肩がぶつかった瞬間とか、暴言を浴びせられた時などに、一気に湧き上がってくるタイプの怒りです。
反射的な怒りをうまくコントロールするためには、その怒りが発生した時の「初期対応」が上手くできるように訓練することが重要です。
そして、もう一つが、思考プロセスが間に入って起こる「認知が介在する怒り」です。
これは、相手の行動の意図や、言われた言葉の意味などを考えることで、はじめて生まれてくるタイプの感情です。
例えば、自分は重要な要件だと思ってメールを送信したにも関わらず、相手から長時間返信がない時に「無視するなんて失礼だ!」と感じたりするのは、認知が介在するタイプの怒りです。
このタイプの怒りを効果的にコントロールするためには、怒りの内容をしっかりと分析して、「認知の歪み」や先入観などを取り除く必要があります。
(詳しくは、後の項目で解説します)
ここから先の項目では、これらの2つの怒りの感情をコントロールするための訓練方法を、3つのステップに分けて解説していきましょう。
そのための3つのステップについて紹介していきます。
感情コントロール訓練1:初期対応
最初のステップとして、怒りが発生した最初の段階から使える、2つの方法について紹介します。
前頭葉で6秒カウント
アンガーマネジメントという用語がまだ世の中に出てくる前から、自己啓発に熱心な一部の人たちの間では「怒る時は10秒待ってから」という話がよく出てきていました。
これは「10秒待つだけでも少しは冷静になれるから、怒りに任せて行動しないですみますよ」ということですが、どうやら脳科学的にも正しかったようです。
アンガーマネジメントをテーマにした本「怒りを味方につける9つの習慣」(日本実業出版社)によると、人間の怒りがMAXの状態でいられるのは、せいぜい6秒くらいなんだそうです。
これは、怒りという感情が、ノルアドレナリンというホルモンのレベル(血中濃度)に関係しているためで、6秒を過ぎるとホルモンが徐々に分解されることで、興奮状態はだんだん収まっていきます。
つまり、カーッと頭に血が登っても、最初の6秒くらいを何とかやり過ごすことができれば、反射的に手を出したり、言い返したりするというような行動は防止しやすくなるということです。
「たった6秒なら」と思うかも知れませんが、怒りが頂点に達している時には、思考がその怒りの対象に集中しているので、その状態で別のことに考えを向けるためには一定の訓練が必要です。
なので、「怒りが湧いてきたらどうするか」ということを事前に決めた上で、その通りに行動するためのトレーニングをしていきましょう。
具体的には、少し頭を使うような方法で、時間をカウントする練習をするだけです。
例えば、
- 100から7ずつ引いていく「引き算」を6回繰り返す(100、93、86・・・)
- 家の最寄り駅から会社までの駅を、6つ順番に思い出す
というような感じです。
人間の脳の中で「怒り」という感情を担当しているのは扁桃体と呼ばれる部分なのですが、数字を計算したり順番に並んだものを思い出そうとすると、前頭葉という「理性」を担当する、脳の別の部分が動き出します。
つまり、理性的にならなければ考えられないことを考えようとすることで、脳の中での「選手交代」を促すわけです。
呼吸法でリラックス
感情をコントロールするための方法として昔から使われてきた「深呼吸」ですが、最近は呼吸法にも脳科学的な効果があることが分かっています。
感情が大きく乱れると、自律神経が大きな影響を受けるのですが、ゆっくりと深く深呼吸をすることによって、神経と感情の状態を落ち着かせる効果があるということです。
GoogleやYahoo! Japanなどが取り入れたことで有名になった「マインドフルネス瞑想」という瞑想法の中でも、呼吸を整えることの重要性は認められています。
MRIによる実験では、ストレスに関わる脳の部位である扁桃体が小さくなるという結果も確認されているそうです。
参考:呼吸法に関する記事(日本経済新聞HPより)
参考:マインドフルネスに関する記事(Dropbox HPより)
怒りを感じた時に「座禅を組んで瞑想を」というのは無理だと思いますので、目をつぶって深く息を吸い、その後に5秒以上かけてゆっくり吐き出すようにしてみてください。
人の体は、息を吸う時に筋肉が緊張し、逆に吐く時にリラックスしやすいようになっているので、特に「息を吐く」部分に意識を集中して時間をかけるのがポイントです
仮に「6秒カウント」をやる余裕が無かったとしても、これだけで最初の6秒を乗り切りやすくなるでしょう。
また、この呼吸法による効果は、怒りの感情が発生した時にしか使えないというわけではありません。
自律神経の働きを整えたり、感情をコントロールするために有効な方法なので、ちょっとした細切れ時間などに、時々やるようにしてみて下さい。
姿勢などに関係なく、呼吸さえコントロールすればいいので、会社のデスクでも通勤電車でも、どこでも実践できると思います。
感情コントロール訓練2:記録
初期対応の6秒を何とか乗り切ったら、次は怒りの感情が生まれた時の状況を、文字で記録しましょう。
できる範囲でいいので、時間を置かずに記録することが重要です。
言うまでもないことですが、これは「うらみ帳」を作って復讐をするためなどではなく、自分自身の感情を後で客観的に分析するための行動です。
ただし、この段階では余計なことは考えず、単にその時に起こった事実と、感じたことだけを書き残すように訓練しましょう。
項目としては、
- 日時
- 場所
- 怒りを感じた出来事の内容
- その時に思ったこと
- その時の怒りの強さ(10段階、あるいは100点満点で評価)
逆に言えば、ここで色々と分析したり、対処法を考えてはいけないということです。
記録をできるだけ正確に残しておくと、後で冷静になってからその内容を分析するために役立ちます。
また、これは感情のコントロールとは直接関係ありませんが、怒りの原因がパワハラやセクハラのようなものだった場合、事実を正確に記録しておくことは、問題を解決するための重要な証拠にもなります。
感情コントロール訓練3:分析
時間が経って気持ちが落ち着いたら、怒りの記録の内容を分析します。
最初に考えるべきなのは「自分がどんな事に怒りを感じるのか」という特徴をつかむことです。
例えば、「上司からの指示に腹を立てることが多い」とか、「いつも同僚が責任を果たさないことに怒っている」とか、「家族が部屋を散らかすことにイライラすることが多い」、というような「傾向」があるかも知れません。
自分が何に怒りを感じるのかということが分かれば、その根本的な原因を解決したり、「それを感じることを減らすためにはどうすればいいか?」を考えるための材料になります。
また、冷静な頭で分析をしてみれば、
「自分は他人のミスに対して厳しすぎるのかも知れないな。」
ということに気付ける場合もあるでしょう。
さらに、もう一つ考えておくべきなのが「認知の歪み」についてです。
人は基本的に、自分が知っている範囲で目の前の出来事に意味付けをしようとするので、そもそも怒りが誤解や勘違いから発生しているということもよくあります。
例えば、
- 挨拶したら無視された!→実は相手に聞こえていなかった
- 大事なメールを返してこない!→実は相手に届いていなかった
- 態度が冷たい!→実は別のことで悩んでいて気持ちに余裕が無かった
というようなケースは「認知の歪み」の一種です。
言い換えれば「思い込み」ということです。
なので、できるだけ一歩引いた視点で、「自分が感じていることとは違う、何か別のことが起こってるんじゃないだろうか?」という事について想像を巡らせてみてください。
ここで重要なのは、実際に何が怒ったのかを「当てる」事ではなく、色々な可能性について考える訓練をすることです。
怒っている本人は「被害者モード」になっているので、どうしても相手に非があると考えがちですが、実際には想像もできないような事情があったりもするものです。
例えば僕の昔の同僚は、「Aさん(同じ職場で働く別の同僚)に挨拶したのに無視された!」と怒っていたら、実はAさんは昔の事故の後遺症で片方の耳が聞こえなかった、なんていう事もありました。
そういう事実に一度でも出会うと「何でも決めつけてかかるのは危険」「想像もつかないような事情があるのかもしれない」という考え方ができるようになり、怒りの発生頻度も減ってくるようになるでしょう。
根本的な原因への対処
これは直接感情をコントロールする訓練になるわけではありませんが、怒りの原因を根本的に解決できる可能性がある場合は、冷静に分析した後で必要な行動を取るようにしましょう。
例えば、職場でセクハラやパワハラを受けているような場合は、担当する部署に相談や報告をするというアクションが必要です。
何か問題が起こった時に「時間を開けて分析してから対応する」という事が習慣になると、それも感情をコントロールする上ではプラスになると思います。
ただし、怒りの対象になっていることが自分の意思ではどうにもならない問題だった場合は、「改善しようと」してはいけません。
例えば、他人の癖に対してイライラするとか、家族が自分の思い通りに行動してくれないということに腹を立てたところで、時間と労力の無駄です。
人は基本的に自分自身のことしか変えられないので、それ以外のものに手を出すと、かえってストレスの種が増えて感情のコントロールは効かなくなってきます。
自分の力では変えられないものによって怒りの感情が生まれている場合は、「どうすればそれと関わる機会を減らせるか」ということに焦点を当てて、自分の判断で変えられる範囲のことで改善策を考えましょう。
今回のまとめ
最後に、今回のまとめです。
ポイント
- 怒りの感情を「直接」コントロールすることはできない
- 行動や思考を変えることで、感情が間接的に変化する
- 感情コントロールの訓練3ステップ
1.初期対応:カウントと深呼吸で数秒を乗り切る
2.記録:怒りのが生まれた時の状況を記録
3.分析:記録内容を分析し認知の歪みについて考える