・根性論じゃなく、科学的で効率的な方法が知りたい
という人に向けの記事を書いてみることにします。
このサイトでは、行動できない人や、せっかく何かを始めても継続できない
いわゆる三日坊主の人向けに「タイニーベイビーステップ」という方法を紹介しています。
これは、行動科学という分野で使われている「ベイビーステップ」という方法を、やる気が出ない状態でもスムーズに実行しやすいようにアレンジしたものです。
既に他のページでも書きましたが、タイニーベイビーステップは僕が運営する講座の中でも活用していて、予想していた以上の効果をあげている「鉄板」のメソッド(方法)です。
そして今回は、なぜこの方法がやる気を出し、行動し続けていくために有効なのかということを、脳科学的な面から解説していきます。
なので、このページの内容を読んでもらえば、タイニーベイビーステップというワークが、さらにやりやすいものになるはずです。
この記事についてご質問・ご意見がある場合は、記事の下部にあるコメント欄からご連絡ください。原則として24時間以内に回答を掲載させていただきます。
やる気はいつも「感情」に向かっている
やる気というのは、言い換えれば「行動するための精神的な力」のことです。
昼寝やテレビを見ることのように、ほとんど労力がかからないことをする場合には、この「やる気」は(ほぼ)必要ありません。
しかし、運動や勉強など「やらなきゃ!」と思っていても一定のストレスを感じることをする時には、やる気を絞り出す必要が出てくるわけです。
では、そもそも人はなんのために行動するんでしょうか?
それは、何らかの「感情」を得るためだと思います。
突き詰めてみれば、人の行動は小さなことから大きなことまで、ぜんぶ何らかの感情に向かっている事が分かります。
例えば、遊ぶのは「楽しい」と思えるからだし、家族や恋人と過ごすのはそれによって「居心地がいい」と思えるからですよね。
仕事とか勉強、運動のような努力が必要になることでも、それは最終的にお金が手に入る事が嬉しかったり、試験に合格できたり、痩せることができて充実感を感じられたりするからこそ頑張るわけです。
歯磨きとか洗顔のような毎日の小さな習慣だって「スッキリした」と感じられたり、誰かと合ったときに「恥ずかしくないように」やるわけですから、やっぱり感情とつながっています。
当たり前のことを言っているように聞こえるかも知れませんが、自分を思い通りに動かすためには、自分自身が「感情のために動いている」ということをはっきり意識する必要があります。
人の能力を引き出すためのコーチングの分野では、自分の感情に注意を向けることを「マインドフルネス」と呼んだりしますが、まずはこのマインドフルネスの状態になることが、自分の行動をコントロールするための基本です。
参考:マインドフルネス(Wikipedia)
例えば、マサチューセッツ・メディカルスクールの精神科医ジャドソン・ブリュワー氏が行った実験では、喫煙者に対して「タバコを吸いたくなった時の感情を記録してください。」と指示しただけで、禁煙の成功率が飛躍的に上がったそうです。
やる気と脳内物質の関係
そして、感情というのは、何もないところから突然に湧いてくるわけではありません。
人間の体内には色々な種類のホルモンが分泌されていて、脳はその分泌量によって色々な「気分」を感じるようになっています。
その作用はとても強力なので、いくら本人が気持ちを整理しようと思ったり、根性で押さえつけようとしても、ほとんど効果がありません。
例えば、ものすごく腹が立っている時や緊張している時には、アドレナリン系のホルモンが体内を駆け巡るので、平気な顔をしようとしても手足が震えたり、汗の量が増えたりします。
女性の場合はエストロゲン(女性ホルモンの一種)の分泌量が変わることで、どうしようもなくイライラしたりすることもあるでしょう。
そんなホルモンの中でも、特に幸福感に関係していると言われるのがドーパミンという物質で、ギャンブルや薬物にハマってしまう人は、賭けに大勝ちした時や薬物を体に取り入れた時に、このドーパミンが大量に分泌されて、幸福感と興奮が一気に高まります。
脳がその経験を記憶しているので、本人は一生懸命「やめよう」と思っていても、
「あの感情をまた味わいたい!」
という衝動が抑えられなくなり、またギャンブルや薬物に手を出すということを繰り返すんです。
実はスマホやソシャゲ(ソーシャルゲーム)に依存する人も、これと同じような状態になっています。
驚くべきことに、SNSの通知が届いた時や、ゲームのガチャでレアアイテムを引き当てた時のドーパミンの分泌量は、ハード系のドラッグ(コカインなど)に匹敵するという専門家もいるほどです。
参考:Dopamine, Smartphones & You(ハーバード大学)
スマホゲームにハマっている人は、興奮するような出来事が起こると「脳汁出た!」なんて言ったりしますが、これは単なる表現ではなくて、体内では本当に快楽ホルモンが出ているんです。
やる気が出るのは一種の「中毒症状」
世の中には、いつもやる気がMAXで、パワフルに行動しているようなタイプの人がいますよね。
そういう人は、ちょっとくらい物事が思い通りに行かなくても、ほとんど落ち込まずに次々と色々なことに挑戦していたりします。
そして、
「どうやったら、そんなにやる気が出るんですか?」
と本人に聞いてみても、たいてい帰ってくる答えは、
「いや、自分にとってはこれが普通なんですよ。」
というようなものです。
実はその裏にも、ドーパミンのような快楽物質の働きがあります。
ちょっと変な言い方かも知れませんが、「いつもやる気MAX!」な人というのは、ゲームや薬物にハマっている人と同じように、行動して何かを達成することにハマっている「中毒」なんです。
行動力があるからそうしているというより「やめたくてもやめられない」くらいの状態になっているということです。
中毒症状というのは、最初のうちはそれほど強くなくても、その行動を繰り返すうちに、脳がどんどん強い刺激を求めるようになっていくという特徴があります。
そして・・・
この性質をうまく利用すれば「やる気が出ない・・・」という人でも、少しずつやる気が出やすく、行動しやすい状態になることができます。
そのための効果的な方法の一つが、タイニーベイビーステップということです。
多少の個人差はありますが、誰もが長くタバコを吸っていれば、だんだん本数が増え、禁煙が難しくなるのと同じで、繰り返すことによってその行動がさらに強い習慣として定着していきます。
やる気のレベルとドーパミン
タイニーベイビーステップでは小さなことを実行することで、その達成による快楽を脳に覚えさせて、意図的にドーパミン中毒の状態を作っていきます。
一般的によく行われている(「タイニー」が付かない方の)ベイビーステップでも基本的なしくみは同じですが、最初の難易度に違いがあります。
良い習慣というのは、ゲームやタバコのような娯楽と違って最初の一歩が踏み出しづらいので、「やる気が出ない」という状態になっている人にはさらにスタートしやすい「思いっきり簡単なこと」を目標にするということです。
さらに、達成したことを目に見える形で記録することで、できるだけ達成感を味わうようにして、強い中毒症状を起こすように工夫します。
どれくらいの行動が「絶対に可能」で、どんな目標が幸福感につながるかについては個人差があるかもしれませんが、その辺は微調整をすればいいでしょう。
タイニーベイビーステップだと「簡単すぎて面白くない」という場合は、少しだけハードルを上げて、楽しく続けられる難易度でやってみてください。
ただし、やる気が出ないという問題で悩んでいる人は、自分で決めた目標を達成できないと「やっぱりダメなんだ・・・」という記憶が積み重なることになって逆効果です。
なので、タイニーベイビーステップを実践する場合は、とにかく
達成すること>>>>行動の大きさ
という考え方で、確実に成功体験を積み重ねることに重点をおくようにしてください。
今回のまとめ
最後に、今回のまとめです。
ポイント
- やる気は感情を味わうために起こり、脳内物質に作用されている
- 「やる気が湧いてくる」という状態は一種の中毒症状
- タイニーベイビーステップにより、意図的に中毒症状を起こせる