・就職のための情報を、ハローワークで検索しようと思っている
・ハローワークの求人票に騙された!
今回はこんな風に、ハローワークで仕事を探すことを検討している人、既に嘘の求人情報によって被害が発生する「求人詐欺」に遭ってしまった人に向けて書いていきたいと思います。
仕事を求めてハローワークの求人に応募してはみたものの、実際にその会社に出向いてみたら「話が違う!」という経験をしたことがある人は多いと思います。
ハローワークの求人含まれる嘘の情報については、テレビなどでも何度か特集が組まれていますが、今でも被害者が後を絶ちません。
・正社員だと思ったら、契約社員やアルバイトだった
・給料の金額が求人票よりも大幅に安かった
・募集されていた仕事の内容と全く違っていた
こんな事は日常茶飯事で、「ハローワーク求人ホットライン」にもかなりの苦情が寄せられているようです。
(件数などの詳細については後の項目に記載します)
なぜ、このような問題が起こっているのか?そして、今後はどうなっていくのか?という点について、僕自身が実際に被害者となった体験や、法律の改正状況などを元にまとめてみます。
この記事についてご質問・ご意見がある場合は、記事の下部にあるコメント欄からご連絡ください。原則として24時間以内に回答を掲載させていただきます。
目次
嘘の求人情報についての体験談と過去の事例
僕が会社をクビになった時に、次の就職先を探していた時に見つけたソフトウェア開発会社の募集要項は、ほぼ「嘘」と言っていい内容でした。
応募資格について「未経験可」となっていて、年収も平均的と言えるものでしたが、実際にその会社の担当者と話してみると、
- 応募資格は経験者のみ(未経験者は会社まで出向いてから門前払い)
- 給料の金額は一定時間の残業代を含んだもので、それ以上働いてもサービス残業
という感じ。
僕はその会社の業務については未経験だったので、さっさと追い返されたわけですが、仮に採用になっても断っていたでしょう。
僕の場合は「無駄足」というだけの被害に終わりましたが、求人詐欺の中には嘘の労働時間を記載して人を採用し、過重労働が原因とみられる事故で社員が死亡したなんていう酷い事例もありました。
参考:弁護士ドットコムニュース
ハローワーク求人の嘘の最大の理由は「お役所仕事」
ハローワークでは、基本的に企業から出される求人情報については、書類の上で問題がない限り、そのままチェックをせずに受け入れています。
さらに求人の件数を増やすために、多くの企業から無料で求人情報を集めているという状況です。
なので、どうしても情報の質は悪くなり、苦情の件数も相当なものになるわけですが、僕の知る限りこの問題は20年くらい前からあまり改善されていません。
その一番の理由は、ハローワークが公共の機関だからでしょう。
民間の転職・就職サービスの場合、嘘の求人情報を掲載して評判が落ちれば、そのサービスを使う人も減ることになります。
そうすれば求人メディアとしての価値が落ちて、それによって会社の収入も減るので、そこには情報の正確さを維持しようという企業努力が発生します。
僕はいくつかの会社で転職者の採用を担当している人たちからも話を聞いたことがありますが、求人サイトに掲載する情報は、年々そのチェックが厳しくなってきているらしく、事前に細かい確認や修正の依頼があるそうです。
それに対してハローワークの場合、運営費用は税金でまかなわれています。
極端な話をすれば、ハローワークの評判がとことん悪くなって、ハローワークというしくみ自体が廃止されても、公務員であるハローワーク職員の人たちは、別の公共の施設で働くだけでしょう。
求人詐欺は必ずしもハローワークだけで起こることではなく、過去には転職サイトや新聞広告などでも似たような問題は起こっていました。
しかし、民間のサービスに比べて、対策がほとんど進んでこなかった最も大きな原因は、やっぱりハローワークの「お酌所仕事」にあると思います。
嘘の求人情報はブラック企業の得意技
ブラック企業は従業員を「使い捨て」にするので、ハローワークのように無料で求人を出せる媒体をよく使います。
民間の求人サービスを使うと数万円~数十万円の費用がかかるのが普通ですが、ハローワークなら無料で求人情報を載せられるので、従業員が辞めていった分はどんどん新しく採用すれば、特に問題はないということです。
中には故意にではなく、手違いで間違った情報を載せている場合もあるとは思いますが、「物や情報が整理できていない」というのはブラック企業特徴の一つなので、どっちにしても会社の体質には問題があると言えるでしょう。
求人詐欺を取り締まる法律は?
実はごく最近まで、仮に企業が意図的に嘘の求人情報をハローワークに出したとしても、それを直接取り締まる法律はありませんでした。
一応、職安法(職業安定法)の第65条8項には
に対して「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という記述がありますが、これは求人を出した会社ではなく、その情報を紹介するサービスの運営者に対してのものです。
しかし、2018年の1月1日には新しい職安法では罰則の対象が広くなり、今では同じく第65条の9項を見ると、
という風に書かれています。
また、ハローワークでの求人情報受け入れに関しても、2017年3月の職安法の改正により「不受理」になる範囲が拡大されたり、違反者が公表の対象になるというような規則が盛り込まれてきています。
参照:職業紹介における求人の不受理【職業安定法の改正】
しかし、これだけでは根本的な問題の解決にはならないでしょう。
なぜかというと、法律の世界では「虚偽」ということを証明すること自体がかなり難しいからです。
仮に企業が悪意を持って嘘の求人情報を出していたとしても、それがバレた時に「単なるミスです」と主張すれば、表面的には「虚偽」ではなくただの「過失」ということになってしまいます。
最終的に虚偽であると認めさせるには、証拠を集めて追求する必要があるわけですが、長年この問題を野放しにしてきた公共の機関に、そんな期待はまずできないでしょう。
求人情報の不受理についても、2017年の時点で年間95件という状況です。
(件数は上記の「職業紹介における求人の不受理【職業安定法の改正】」より)
「ハローワーク求人ホットライン」に寄せられた「求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数」の件数が8507件であることを考えると、まだまだ氷山の一角のさらに一部くらいの件数に過ぎません。
参照:厚生労働省の報道関係者向け情報
ハローワークは仕事探しに使わないのが得策
ハローワークと求人情報の「嘘」の問題については、今後も少しずつ対策が取られていくでしょうし、法律などが改正される可能性もあるとは思います。
しかし、今までの経緯を見ると、1年や2年で大きく状況が変わることはまずないでしょう。
ルールや運用が変わり、求人情報を出す企業にまでそれが浸透するまでには、相当な時間がかかることが予想されます。
上記で引用したページには「平成29年度のハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数が3年連続で減少しました」というタイトルが付いてはいますが、このページに記載があるのは報告の件数と「新規求人件数」だけです。
実際に求人に応募した人の数に対してどれくらいの「嘘」があったかは分かりませんし、既に「ハローワークなんて役に立たない」と考えて使っていない人もいるでしょうから、現時点で「改善した」と考えるのは少し気が早い気がします。
以上のことを考えると、就職や転職を考える上ではハローワークを利用せずに、より求人詐欺に出会う可能性が低い民間のサービスを使うのが得策と言えるのではないでしょうか。
ハローワークはあくまでも「失業の認定や失業給付などの手続きをする場所」と割り切ってしまえば、公共のサービスにタダ乗りしようとするブラック企業に悩まされるリスクは軽減できると思います。
なお、万が一求人情報の中に嘘の記載を発見したら、その時はぜひ「ハローワーク求人ホットライン」に詳細を伝えるようにしてください。
念のために、連絡先の情報を記載しておきます。
電話番号 03 ( 6858 ) 8609
受付時間 8時30分~17時15分(年末年始を除く)
今回のまとめ
ポイント
- ハローワークの求人票には嘘の情報が多い
- 求人詐欺の最大の原因は「お役所仕事」
- 求人詐欺の防止策は現状では不十分
- ハローワークは仕事探しには使わないのが得策